【MADE IN KUMAMOTO #1 – 後藤コーヒーファーム】

MADE IN KUMAMOTO #1

後藤コーヒーファーム

南阿蘇の自然がもたらす強さと優しさ。人と場所をつなぐコーヒー。

 

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コーヒー豆は「ブラジル」「キリマンジャロ」といった、産地で呼ばれるのが一般的。そういえば「ジャパン」ましてや「クマモト」なんて聞いたことがない…ということで、ここではメイドインクマモトのコーヒーの作り手たちを紹介しよう。

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一杯のコーヒーが持つ見えない力

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もしも熊本で育ったコーヒー豆があったらどんな味がするのだろう。いつか、街中のコーヒースタンドで「クマモトの深煎りで。」なんて注文する日が来るのだろうか。想像しただけでなんだかワクワクしてくる。でも、そんな日が来るのは案外すぐかもしれない。

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阿蘇郡南阿蘇村。長陽駅から車で数分の場所に、後藤至成さんが営む『後藤コーヒーファーム』はある。阿蘇の山々に囲まれた雄大な敷地。そこに立つ力強い文字の看板には、黄色のコーヒーカップがちょこんと乗っている。元々、高校で農業を教えていた後藤さんは、生徒とともに多種多様な農作物を育ててきた。その中には、かねてから興味があったという熱帯果樹、そしてコーヒーの木もあったという。

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彼は、’18年3月に退職したことをきっかけに『後藤コーヒーファーム』を開設。現在はメインとするコーヒーの木に加え、バナナ、パイナップル、さらに20種類を超える野菜を育てている。退職してもなお、コーヒー豆を作り続ける理由とは一体何なのだろうか。

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「熊本地震の後、南阿蘇の復興のために何かできないかと考えた時、高齢者の方が楽しむ〝茶飲み話〟ならぬ〝コーヒー飲み話〟ができる場所が南阿蘇に点在するとおもしろいんじゃないかと思ったんです。それで学校で取れた豆をその場でフライパンと網を使って焙煎し、すり鉢で豆を挽いて淹れてみると、みなさんホッとした表情で飲んでくれたんですよ。コーヒーを飲んで一息つく時間と、一杯のコーヒーの力がまだここには必要だと気付きました。」自分たちが暮らしている土地・南阿蘇で育った豆だからこそ、優しく、でも力強く、彼らの背中を押すことができるのだ。

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卒業生からの就農祝いだという赤いつなぎ。赤は後藤さんのトレードカラーなのだとか。背中には、いつも最大値の力を出し切るという意味のあだ名「MAX」がどんと構える。

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その土地を味合うということ

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「コーヒーの木って、この豊かな自然と、自然の雨があれば十分成長するんですよ。冬の寒さが心配ですが、温泉熱や地熱なんかを利用できないかなと。そして、いずれはオーナー制度を導入しようと思っているんです。コーヒーの木の様子を見に南阿蘇に来て、ついでに野菜も作ってみたり。休憩に自分が育てた豆をその場で焙煎して飲んで、温泉に入って帰る。そんなサイクルができると楽しいですよね。」

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まるで夢のような話だが、栽培に関する知識と技術を持つ後藤さんが言うのだから妙に現実味を帯びている。多くの人が南阿蘇に足を運ぶきっかけとして存在するコーヒー。その内に秘める可能性がひしひしと感じられた。

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後藤さんは、まるで教え子を見守るかのような眼差しで畑を見つめる。熱帯地域でしか栽培されていないと思われがちなコーヒーの木は、南阿蘇で元気に育っている。コーヒーの木が実は暑さに弱いことや、氷点下の状況でもその根は辛抱強く生きていることも、やってみないと分からなかったことだ。生徒一人ひとりに個性があるように、作物にもそれぞれ違いがあり、向き合ってみないと気づけないことばかり。「毎日畑に行くのが楽しいんです。日々の学びがおもしろくて。」と話す後藤さんは、太陽に負けないくらいまぶしい笑顔を見せた。南阿蘇で作られるコーヒーは、その土地の新たな価値の創造につながっていく。

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記事協力:シティ情報くまもと
http://kumamachi.jp